貴と水
Noble Arrow with Limestone

貴と水
Noble Arrow with Limestone

秋吉台と
110mg/ℓの中硬水

「貴の水」は本州では比較的低い中国山脈に降り注いだ雨が、県西部に位置する秋吉台(下段写真2)と呼ばれるカルスト台地のミネラル分を含みながら、ゆっくりと濾過されて瀬戸内海に流れ出る「厚東川」のその水です。ちょうど渓流から本流に変わる二俣瀬にある永山は、敷地内の地下150mの井戸から湧き出た伏流水を汲み上げます。水質は110mg/ℓの中硬水。この水で醸された酒はカルシウムなどのミネラル分から育まれ、適度な酸味を持ちながらクリアな辛口の中に米の旨味をしっかりと感じ取れる酒になります。アメリカではそのクリスタル感からNoble Arrow(高貴な矢)と呼ばれます。様々な鉱石を含んだお酒が存在する世界では「Noble Arrow by Limestone(石灰石を含んだ高貴な矢)」が貴の酒を的確に表現するフレーズです。

生酛つくり-トレンドから
トラディショナルへ

貴の水に対し、山口県の東部には軟水の名川が幾つかあり、その水で仕込まれた名酒がたくさんあります。さらに東へ、300km行くと歴史的な日本酒の里、灘になります。六甲山を北にみる灘の水質は160mg/ℓの硬水。古来からこのボディに負けることのない酒造りを行ってきた土地柄です。貴のはじまり以来、純米酒市場の主流に合わせてきた酒造りを、近年わたしは少しずつ灘の手法に近づけようとしています。2019年の出荷の数割は、生酛作りによるものです。輸送時の温度管理など思いもよらなかった時代、高温の船底で揺られながらもワインが世界に拡がり今の地位を得ることができたのは、醸すぶどうの力とその力をワインに凝縮させることを常に意識してきたからに他なりません。昨年設立した農業法人により、しっかりと生命力のある米を作ること。その力を引き出す醸造法を研鑽すること。それが私たちに与えられたこの水に応えるフィロソフィーです。

貴の仕込み水
厚東川の水源

1 / 写真左)秋芳洞(あきよしどう)は、山口県美祢市東部、秋吉台の地下100-200mにある鍾乳洞で、約1kmの観光路をもって公開されています。鍾乳洞としては日本最大規模。洞奥の琴ヶ淵より洞口まで、約1kmにわたって地下川が流れ下っています。特別天然記念物。秋吉台国定公園に属しています。


2 / 写真左から2番目)秋芳台(あきよし台)は、山口県美祢市中・東部に広がる日本最大のカルスト台地。北東方向に約16km、北西方向に約6kmの広がりを有し、台地上の総面積は54km2。貴の仕込み水となる厚東川によって東西二つの台地(東台と西台)に分けられ、東側地域が狭義の秋吉台(特別天然記念物、国定公園)です。


3/ 写真左から3番目)美祢市秋芳町嘉万八代にある秋芳白糸の滝。厚東川の源流桂木山付近の上流に位置し、白糸を垂し景色は夏清涼感のある避暑として人気のあるスポットです。


4/ 写真右)永山本家酒造場。永山本家酒造場は、厚東川の中流域に位置する二俣瀬に1888年より蔵を構えています。2007年に井戸を掘り、厚東川の伏流水を使用しています。