TAKA TIMES 21 /21_06

お酒にまつわる様々な情報を
お届けします。

今まで酒販店さまにリリースをしていました「TAKA TIMES」を、今後は一般の方々にもご覧いただける様にウェブサイトを通じて発信する事になりました。
月ごとに永山本家酒造場の酒情報をはじめ、杜氏・永山貴博が考えるこれからの日本酒のお話や、お酒にまつわる様々な情報を発信していきますので、より日本酒への愛情を深めていただけましたら幸せです。

2021年 5月 vol.21
貴 生酒 雄町 生酛仕込み
特別純米 720m 1,980円

コロナの中で
新しい取り組みが始まりました。


コロナ禍の状況でお酒がこれまでのように出荷されなくなった今、原点に戻り様々な試みをして来ました。例えば生酒であれば生ひねを抑える麹を採用したりです。そんな中で今回蔵開き限定の貴 生酒雄町生酛造りがとても良い体験になりました。一つは山田錦がクラフト感を備えながら高い生産高をあげられるまで酒造りが進化し、伸び代が限定的と感じられるのに対し、雄町は沢山の可能性を残した酒米であるという認識に今一度立てた事。二つめは、雄町を生酛造りにする事で貴が本来目指してきたしっかりした酸の輪郭を形成でき、幾通りかの味わいのバリエーションをイメージできた事。三つめは、永山自体が2代前まで自家栽培をしていた雄町を、本年より本復活させる事ができ、改めて山口県産の雄町酒が誕生する事への期待感です。

10数年先を見据えた
貴のテーマとなります。

低度数でしっかりとコクがあり、飲み終わった後にはスッと体に入っていく、そんなワインのようなイメージが雄町で具現化できそうで、とてもワクワクしています。

貴夏酒 スパークリング
特別純米 720m 1,540円

『夏酒は、2007年に
お客様からいただいた宿題でした。』


そう話したのは2014年danchy7月号、新政の佐藤さんとの対談の中でした。ちょうど時代が蔵元杜氏に変わってゆくタイミングで、若い杜氏たちが、それまでの歴史の中で手付かずにいた市場に取り組みはじめたのが夏酒ブームのきっかけです。新しい市場という事もあり、伝統に裏打ちされた醸造法ではなく自由な発想で酒造りに取り組めた事も蔵元杜氏を魅了し、たくさんの魅力的な夏酒が世に出ました。貴は2007年から一貫して低めの度数で、爽やかに飲めるシャンパンほど炭酸の圧が強くない微発泡の夏酒を目指して来ました。2014年の対談ではようやく思い通りの夏酒ができた事を誌面で語っています。後は、せっかくの新しいマーケット、これまでと違ったお客さまに違った振る舞われ方、飲まれ方がされる環境を作りたいですね。

夏酒と呼ばれなくなるほど
自然に楽しんでもらえるのが理想です。

思い描くのはアルザス地方の『ペティアン』です。太陽が降り注ぐ中、気のおけない仲間たちとお料理を楽しみながらワイワイとする宴です。そして夏ワインと呼ばれることがないように、いつかは夏酒も特別なものでなくなれば良いですね。2021年はボトルも透明にマイナーチェンジの予定です。より軽やかさが演出できると思います。

貴と話そう!『日本の中の日本酒。』

酒造場に祀られている
2つ神様とお酒の起源。


酒造場を訪ねるとどこにも2つの神様が祀られています。一つは醸造所内の神棚です。こちらは京都 松尾大社の御祭神、オオヤマクイノミコトを祀るものです。5世紀ころ酒造りを得意としていた秦氏がこの地に住み、酒を神社に供した事で室町以降松尾大社を日本第一酒造神と呼ぶようになりました。京都太秦(うずまさ)は秦氏に由来するものですが秦性は本来朝鮮半島に起源があり、酒は九州から出雲大社をへて京都に伝えられたようです。一方、杉玉を御神体とする神殿は、奈良大神大社(みわたいしゃ)を祀るものです。6世紀ごろ、この地の豪族物部氏が高橋活日命(タカハシイクノ)という者に酒造りを命じ、その酒で当時流行っていた疫病を治めたと言われています。その酒は一夜で醸され、その酒造りを教えたのが大物主神で、以来大神大社の摂社、活日神社が酒造りのもう一つの神様とされています。杉は樽に用いられ、滅菌作用があり当時から神聖な存在だったのでしょうか。このコロナ禍でお酒が敵視されている現状を考えると、皮肉なものです。