TAKA TIMES 23 /21_08

2021年 8月 vol.23
貴 純米大吟醸
別誂え Another Story
特A山田錦・純米大吟醸 1,980円

2019年に仕込んだ
あの純米大吟醸。

蔵元ならどこでも経験している”あるある”かもしれません。丹精込めて造ったお酒であっても、時にお蔵入りになってしまう場合があります。永山本家酒造場も2019年米で醸造した「純米大吟醸プラチナ」の一部がそんな事態になってしまいました。その経緯を申しますと、、、このお酒の酒米は兵庫県東条の特A山田錦を使用しています。もちろんラベルにもそのように表記をしていたのですが。

2019秋、発注先のJAから
連絡が入りました。

「19年の東条地区山田錦がやや収穫減になるため、依頼をいただいた量通りの出荷が難しく、一部近隣地域の山田錦(こちらも特等米です)が入りますがいかがでしょう」という旨の内容でした。本来であればその時点でしなければならないはずの、ラベルに東条産を明記していたか否かの確認を怠ってまったのです。今年も例年通りに良いプラチナが仕込めると安堵した事を覚えています。

ラベルには、はっきりと
東条とありました。

お恥ずかしい話ですが、ラベルに東条産が明記されている事を思い出したのは仕込みをし終わった2020年の年初頃でした。勿論このまま市場に出すわけにはいかないという判断をし、出荷の停止となりました。(涙)

一年後、
試飲をしてみると。。。

一年が経ち、棚卸をした際に、このお蔵入りのプラチナが冷蔵庫の奥の方から出てきました。その数2800本、決して少ない数ではありませんし、気持ちを込めて造った酒には変わりありません。1年前の悔しさを思い出しながら、一本開けてスタッフと試飲をすることに。 「これは美味しい!」 1年熟成されたことで角が取れ、まろやかさとキレのある上品な味わいになっていたのです。磨きを4割にしていることも幸いし1年経っても味の劣化が出ず、むしろ飲み頃の状態となっていました。

マーケティング戦略のような
アナザー(トゥルー)ストーリー。

なんだか最初から計画されたマーケティング商品のようになってしまいましたが、ぜひ皆さんにも飲んで欲しいという思いから通常の「プラチナ」からぐっと値段を下げ「別誂え Another Story」と名付けて販売をすることにいたしました。 兵庫の特A山田錦・純米大吟醸が1980円(税込)/720mlです。 とてもリーズナブルな価格なので、家飲みにもオススメですし、ギフトとしても十分なクオリティです。こんなストーリーを肴にしながら、上質な酒の味を楽しんでいただけたらと思っています。

貴と話そう!『日本の中の日本酒。』
02 貴とコロナ後を考える

コロナ禍で見えてきた。
考えるヒント。

一足早くワクチン接種が始まった欧米諸国では、国ごとの差はあれど少しずつ日常が戻り、飲食店でのアルコール提供も始まっています。日本酒業界においても、新型コロナの影響で1年以上という期間通常の営業ができなかった中で、ようやくゴールが見えてきた、そんな状況ではないでしょうか。多くの専門家が口にしているように、コロナ前と後では、消費の形態が大きく変わると言われ、私自身もそう感じています。だから今、まだコロナ禍にある時に、次の時代の日本酒のあり方、販売方法、輸送手段などについて考えをまとめておく必要があると私たちは考えています。

人から物の
ロジスティックへ。

旅行やレジャー、外食など。これまで人が移動する事で生まれていた経済が100%戻ることはないというのが大方の見方です。そうすると移動を担ってきた交通手段に空きスペースが生まれてくるはずで、そこには(コスト削減を伴いながら)物流(ロジスティックス)が代替されるのではないでしょうか。世界は遠くになり、物はより身近に感じることになるでしょう。日本酒はより世界に通じるユニバーサル基準を備えた酒造りに向かって行くのではと思われます。

組織から個人の
コミュニケーションへ。

コミュニケーションのあり方を大きく変えました。仮に会社の仕事であっても、有能な一個人から発信される良質の意見やプレゼンテーションは、組織を超えて個人の能力を浮き彫りにさせました。既に組織を離れ、または組織の中で新たな価値を見出し新しい取り組みを始めた多くの方がいます。永山本家酒造場にも隠れた才能やキャリアを持つ人間がいます。私自身、杜氏としての力を磨くと同時にそのような人たちを活かせるステージとしてこの酒造場を機能させたいと思っています。

SDGsに突きつけられた
日本酒業界のテーマ。

山田錦を極限まで磨くことでしか、人々が美味しいと感じるお酒が造れないとしたら、私たちは環境に配慮のできない業界として見放されてしまうかもしれません。また米作農家の高齢化という根源的な問題も未解決のまま、市場は「以前」の回復を願っているように感じます。コロナ後にすぐにでも訪れるSDGsの潮流は、私たちそれぞれが解答を用意する必要を迫っています。