TAKA TIMES 26 /21_10

貴 特別純米 新嘗祭
生酒
11月22日発売
価格 : 1,650円(税込)

永山本社前でたわわに実る二俣瀬 山田錦。
今年はどんなお酒に仕上がるでしょう。

01
11月23日への
こだわり。

永山本家酒造場では2021年11月23日新酒の解禁日を目指し、10月より酒造りの準備が始まりました。
23日の勤労感謝の日は新嘗祭(にいなめさい)と呼ばれ天皇陛下がその年に収穫された穀物を神殿に供え、自ら食するという五穀豊穣を祝う神事の日です。昭和には日本中の酒蔵が近くの神社に酒を奉納し、近隣の人々に酒を振舞う習慣がありました。

貴の新酒は、
新米から造ります。

今年も解禁に間に合わせるよう、山口市徳佐の十種の郷(とくさのさと)へコシヒカリの買い付けに伺いました。
そしてその足で久留米市の精米工場へ。
そうです。貴の新酒は飯米(コシヒカリ)を醸します。それは「新酒」を「新米」から造るためです。一見当たり前のようなこの事実、最近その前提が大きく揺らいでいる気がします。

古米から造られる
新酒が流通。

近年日本酒業界では、お客様からの期待に応えようと新酒の早期出荷を目的とするため、古米での新酒醸造が常態化しています。
山田錦の自然なサイクルは、早稲米や飯米より一ヶ月遅い10月初旬に収穫されます。その後、農産物検査、精米、そして醸造という過程を経て、酒屋さんに並ぶのは早くとも12月初旬になります。言い換えれば、その時期以前の山田錦による新酒は古米から造られたという事になります。
そして年々日本酒業界が頑張る事により過剰になり、そのような日本酒が多く流通するようになりました。

日本酒は農産物、
だから季節を味わう。

永山が大切にしている一つに、「酒造りは農業と共に」という事があります。日本酒は農産物であり、自然の力を借り、その力の最大値を引き出すことで良い酒造りができます。言い換えれば10月には10月に醸すお酒があるのです。
ワインにはボジョレーヌーボというその年の新物を味わう文化が根付いています。使われるブドウはガメイ種。ソービニオンやピノに比べれば劣るブドウです。しかし、このイベントが長く継続されているのはワインが農業や自然に深く寄り添っている証ではないでしょうか。顔の見える生産者との日本酒造りの新しいストーリー、農業を本来のあるべき形にしていく事、まさに永山本家酒造場が目指す酒造りがこの新酒にもあるのです。

飯米で造る
日本酒の可能性。

コシヒカリで造る日本酒はタンパク質の影響で、えぐみや酸がより出てしまう傾向があります。しかしそれを個性と捉え、他にはない旨味を引き出し、全体を纏める力こそが酒造りではありませんか。
また、この2年のコロナ禍で余剰山田錦を飯米として販売する道を模索する方も多く見られます。確かに一つの方法かもしれません。しかしその前に、食べて美味しい事が自明となっているコシヒカリを酒米としてどう使いきるのか?その可能性を模索してみるのも、日本酒の新しい試みに違いありません。
私は、コロナの2年で実に多くの事を学ばせていただいた気がします。
次号はいよいよ、2021年 貴の解禁です。

貴と話そう!『これからの日本酒。』
02 農産物検査員 後編
ビオの日本酒が世界へ進出する道。

JAによる農産物
グレーディングの限界。

前号でお話ししたように、農産物検査員はJAによって長く寡占されてきた農水省の国家資格でした。 昭和の時代から続いたこのシステムは広く平滑的に日本の食品を管理すると言う面では機能したかもしれません。しかし市場の発展と共に特殊な地域性を活かしたい、またこれまでにない農法のアプローチを試みたいなど、いわば既存の枠組みを脱し、今の過疎化する農家事情を改革したいとする農業従事者にはとても扱いづらい物でした。例えば、無農薬有機栽培で酒米を造られている農家さんがいるとして、ある田んぼだけカメムシに浸食された場合、全納品物が否応なく3等として値打ちされるという現実があります。さらに、私たち酒造メーカーが仕入れをJAに一任している限り、その成り行きさえ知らされる事はありません。3等の打たれたその酒米は誰に評価される事もなく(純米酒ではなく普通酒の原料として)相応の価格で取引される事になってしまうのです。そんなリスキーな農業をする方は、まずどこにもいないでしょう。それでは海外のどの街にもあるような、ビオのお店に日本酒が並ぶことは永遠にありません。

酒米を識る
酒造メーカーへ。

長く私たちは、酒造メーカーであって、農作物メーカーとしての意識を持つことがなかったと思います。魚を売りながら、魚の事をよく理解していなかったのかもしれません。永山のような農業法人に農産物検査員の門戸が開かれたと言って、ルールそのものが変わるわけではありません。しかし、生産者と酒造メーカーが直接対話する事によって、グレーディングにおいても、その仕事の価値の見極めにおいても、そしてその原料のトレーサビリティ、安心度においてとても大きな変化をもたらすのではないかと思います。まずは酒造メーカーとして原料である米としっかり向き合う事。そこからしか新しい日本酒のストーリーは始まらないのではないでしょうか。

03
2021年 二俣瀬 山田錦


このTAKA TIMESが届けられる頃は、稲刈り真っ盛りの時期になります。
さて今年の山田錦。比較的涼しく曇天が続いた夏だった事もあり、収量は例年より少なくなりますが、日本酒には質の良い酒米となりました。特に8月後半から
9月、実が弾け、穂が垂れる時期の涼しさは心白にしっかりと良質の澱粉を含むと言われています。12月の貴 山田錦の新酒にどうぞご期待ください。